皆さんこんばんは、ソムリエです。
先日時長さんのお仕事にくっついて行って半年ぶりの関西に行ってまいりました。3泊4日の弾丸ツアー。大阪で行われたセッターミーティングや、セットの現場をソムリエとして見学させて頂き、関西のいろんなジムの人に出会い、話し、とても刺激的なツアーとなりました。
今回のツアーで色んな方のお世話になり、ご迷惑をおかけし、皆さんの優しさと厚意によって生かされているのだなと心の底から思いました。本当に、本当にありがとうございます。皆さんの優しさと厚意に答えられるよう、これからも記事を書き続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。
第37回となる今回はClimbing space BOLDとセッターミーティングの感想について書いていこうと思います。
今回、大阪でセッターミーティングが行われ、その会場となったのがここBOLDでした。恥ずかしながら、BOLDのことは行きの車の中で初めて知りました。SNSを見ても雰囲気が掴めずどんなジムなのだろうと少し不安な気持ちを抱いていたのですが、いざ行ってみたら良い雰囲気のジムで、スタッフの皆さんもとってもいい人達で、すっかり好きになってしまいました。関東を主体に動いてる身として、ここはまさに隠れた名店。今回はセッターミーティングにてお邪魔しただけで、遠征客としていつものように登り倒して来たわけではないので所々抜けているところがありますが、書ける範囲で紹介できればなと思います。多分記事としては普段の倍くらい書けそうなので長くなることをご容赦ください。
では今回も早速紹介して行きましょう。
店舗の大きさ:普通
壁の高さ:普通からやや高め
課題数:多い
課題の傾向:(?)
グレード感:普通くらい(?)
店舗は二階建てになっており、外から一見するとそんなに大きくないのかな?という印象でした。しかし中に入って全体を見てみると、結構壁が大きい。入り口正面に緩傾斜があり、その裏にルーフ・強傾斜、緩傾斜(マントルスラブ?・垂壁・コーナー)と一通り揃っています。そしてルーフと強傾斜が異様に大きい。奥壁は全体的に壁が近めでぎゅっとしているような空間なのでそう感じるだけなのかもしれませんが、傾斜の威圧感がとても印象的でした。二階にはまぶしが二面、Moon Board、トレーニングスペース、キッズウォールがあります。こちらもぎゅっとしていて秘密基地みたいな居心地の良さとワクワク感がありました。こういう木の温もりがある空間って本当に好きです。朝方の誰もいない時間に音楽も流さず一人で課題と向き合って見たいですね。普段とは違う集中力が発揮できそうです。
1階の壁の高さは普通くらいといったところ。2階は4.5mあるので高めと言えるでしょう。
壁の高さを見ていてすごく印象的だったのが、まさかの天井にボルト穴が空いているということでした。色んなジムに行きましたが、天井にビスがついていることはあれど、ボルト穴が空いていることは見たことがなかった(もしくは気づかなかった)。今回のセットでもボテが天井に取り付けられており、強度的に大丈夫なのかなとすごく気になってしまいました笑(ちなみに大丈夫だそうです)
課題数に関しては多いと言えるでしょう。1階は85本のマンスリーとなっており、2階にはまぶしとMoon Boardがあるので課題が尽きるという事もなく、遠征先としてうってつけのジムです。マンスリー課題が85本もあるというのは実際尋常じゃない事です。私の個人的感覚ではマンスリーとしてラインセット(もしくはカラーセット)をしている場合、平均10〜20本前後。50本もあれば多い方。ですが一日中登り倒す遠征をする場合は、グレード感にもよりますが80から100くらいは欲しいところ。BOLDは毎月新しい課題が85本も出てくるので、もし関西に住んでいたら毎月行きますね。
今回は遠征として訪れることができなかったので、『課題の傾向』と『グレード感』に関しては分からないというのが正直なところです。セッターミーティングの課題を一部触った感じでいえば普通くらいなのかなと思いましたが、その後追加された課題を触ったわけではないので全体としてどのぐらいのグレード感なのかは分かりません。ま、その辺は実際に遠征に行ってのお楽しみとしておきましょう。
セッターミーティングが始まる前に真っさらな壁を見て回っていたのですが、ここの壁は本当にユニークで、魅力的な壁でした。岩橋さんの言葉を借りれば、『弱点の多い壁』。コーナーがあり、カンテがあり、R状になっていたり、壁の変わり目になぜか巨大なアンダー(多分意味が伝わらないと思う)があったり、とにかくユニークな壁でした。実際セットするとなれば苦労させられる壁なのでしょうが、一クライマーとしてこの壁にどんなラインが引かれるのだろうとワクワクしてしまいました。
そしてホールドのチョイスが個人的にドストライク。teknikやe-grip・Flatをはじめとした、とても良質なホールドの数々。一通り外し、セットに備え並べられたホールドはどれもこれもレギュラーセットで使えるものばかりで、それを見ているだけでも良いジムだなと思ってしまいました。やや棘がある表現ですが、遠征先であまり質の良くないホールドが買ってあったりすると、「あー、このホールド買っちゃったのかー」とゲンナリしますし、そういうのが多いとあまり寄り付かなくなるので、ジムのホールドというのはとても重要です。
また施設としても魅力的で、2階のレストスペースがジムっぽくなく居心地が良くて、シャワーも完備されています。何より階段とは別に1階と2階を繋ぐハシゴと滑り棒があり、遊び心があって素敵でした。このご時世、何でもかんでも危険だと排除するきらいがありますから、こういうものはとても大切だと思います。
さてさて、ここまでBOLDについて書かせていただきましたが、これより先はセッターミーティングを見た感想について少し書いて行こうかと思います。セッターミーティングの感想といっても、ジムソムリエとして、傍観者としての感想なので退屈なものかもしれませんが。
まずセッターミーティングについてざっくり説明すると、BOLDの浅井さんと時長さんの主催でセットに関しての意識共有を図ろうという企画で、関西のジムセッターを中心に15人ほど集まり、グループでセットしたり、制限時間短めでスピード感を持ってセットしたり、高グレードと低グレードをセットしたり、セットしては試登・意見交換して再びセットするという感じのとても濃い内容でした。で、ソムリエさんはなぜかそんな場に居合わせたわけです。なんでお前そんなところにいるのって感じですが、自分でも不思議です。ですがソムリエとして、クライミングジムのレビュワーとしてこの場に居れたことはとても貴重な経験になりました。
以前ロストキャニオンにてセットの手伝いに入っていたことがあり、ヒラリーさんやミハルちゃんがセットする現場を見たことはありましたが、それぐらいしかセットする様子を見たことがなかったので、今回のミーティングは見ていて素直に面白かった。ホールド選び、セットの切り口、調整や作った課題との向き合い方、一人一人少しづつ違っていて、そこに確かな個性と意図を感じられ、今後課題と向き合う際の視点に幅が増えたかなと思います。
またミーティングを見ていて、僕らクライマーはもっと色んな人と出会い、話し語らい、考え続けていかなければならないのだなと思いました。それはセットに関してでも、ジムに関してでも、外岩のことについてでも、コンペやマナーについてやなんでも良くて、とにかくクライミングについて考え続けて意識を共有し続けることが、自らやクライミング界全体をより良くしていくのではないかと思いました。実際、今回のツアーで関西のジムの方々と沢山話をすることができましたが、関西のジム事情は聞いていて驚きの連続でした。関東ではホームジムを持たないクライマーが随分増えましたし、去年一昨年よりもジム遠征に行く人の数がかなり増えました。今や遠征組をメインターゲットに見据えたジムも多くありますし、ジム遠征というものが外岩と肩を並べるほど主流なものになって来たかと思います。しかし大阪をはじめとした関西ではジム遠征自体少数派らしく、外岩派の人がずっと多いと。せいぜい近場のジムか、雨の日の代替案程度。ジムとしてもゲストセッターを呼んでSNSなどで宣伝して遠征組を呼び込もうという感じもあまりなく、ジムごとに完結しがちだと。関東と関西ではこんなにもジム事情が違うのかと、驚きを隠せませんでした。そして同時に、もっと多くの人と出会い、話し、沢山のことを知り、それを色んな人と共有したいなと強く思いました。私はソムリエとしてまだまだこのクライミング界を知らなすぎると、痛感しました。
ジム遠征についての話が上がったので、余談ですが少し語らせてください。
今やロッククライミング・スポーツクライミング、さらにはその中でもリード・ボルダリング・スピードと分類され、オリンピック競技に選ばれたこともあり、飛躍的に知名度は増しクライミング人口は一気に増えました。クライミングと一括りにいえど、その楽しみ方は人それぞれ様々な形があり、その多様性が許容される競技としての特異性がクライミングの魅力と言えるでしょう。それらの中から楽しみ方の一つとして、ジム遠征の魅力について色んな人に伝えることができればなと思います。
初めて行くジム、初めての壁と形状、初めて触れるホールド、今までやったこともなかった動き、そこで知り合う人達、その全てが楽しく面白い。外岩に行ってもそういった未知のものに対してのワクワク感を味わえるかと思いますが、ジムなら比較的手軽にそれを味わえる。
そして何より、この先何年何十年と残り続ける外岩の課題よりも、今触れておかなければ二度と触れることのできないジムの課題にずっと魅力を感じてしまうのです。課題越しに伝わるセッターの意図や個性、ジムごとの特色や地域性、それらを感じ考えながら登るのが好きで、クライマーとしての感性を刺激される見た目の課題には芸術性さえ感じてしまいますし、ジムの課題はさながらライブアートのようだと思っています。二度と触れられないと言いましたが、同じホールド、同じ壁、同じ配置にすれば復元は可能でしょう。ですがジムの営業的にそんなことはまずあり得ないじゃないですか。だからこそ価値がある。持ち得る時間や労力を注ぎ込んでまで触れる価値がある。また外岩に行き自己を極めていくよりも、ジムに行って様々なことを吸収したいと思ってしまうんです。ホールドや壁、ムーブや身体操作、ジムやそれらに関わる全ての人、クライミングという言葉に内包された色んなことをもっと知りたい。そう思って色んなジムに行ってしまうんです。
とりあえず今回はこの辺までとしておきましょう。全然語り足りないで、この続きはまた次の記事に回させていただきます。
そしてミーティングを見ていて、自分がどうしようもなく表層上の傍観者なのだなと痛感しました。セッターでもなければ、ジムスタッフでもない、ただのお客さん。ただのレビュワー。良いジムをもっとみんなに知ってもらいたくて始めて、大好きなクライミングともっと深く関わりたくて続けて、でもこのクライミング界を形作る何ものにもなれていないなと。大阪でのセッターミーティングという、時代の中の新しい流れを目の前にして、これからどんどんクライミング界が面白くなっていくであろうという中で、それを眺めることしかできない歯痒さ。最近ソムリエのモチベーションがやや低下気味であったので、良い刺激をもらい考え直す良い機会となりました。とりあえず私にできることといえば、様々なジムに行き、登り、感じて考え、書いて発信し続けること。それをもっと高め、全国各地のクライマーの橋渡しとなりたい。そう強く思った1日でした。
さて、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。やっぱり普段以上に長文となってしまいましたね。ツアーから帰って一週間ほど毎日毎日いくら作業を続けても終わらない大仕事でした。セッターミーティングを見て、沢山の話を聞いて、刺激をもらって、色んな考えで頭の中がごちゃごちゃして、今だそれを整理しきれていません。
もっとBOLDの紹介を書きたかったのですが、やはり遠征として登れたわけではないので、中途半端な形になってしまい残念です。ですが胸を張って皆さんにお勧めできるジムです。壁もホールドもスタッフの皆さんも最高で、そう遠くないうちにまた関西ツアーとして必ず訪れようと思います。ちなみに余談ですが、BOLDの真横に『claft beer Base』と名前の通りクラフトビールの専門店があり、登って呑めるという完璧な布陣が整っております。次回行ったら絶対ここで飲みたい←
とりあえず本当に収拾がつかなくなってしまうので、やや強引ではありますが今回はこれにて終いとさせて頂きます。
それでは皆さん、またお会いしましょう。