皆さんこんばんは、ソムリエです。
第57回は『クライミングジム ガラパカ』を紹介します。秋田に2店舗を構えるジムであり、常々ずっと行きたいと思っておりました。
ガラパカクライミングジム
何で行かなかったって? 遠いからに他なりません。栃木からでも東北道をひた走り、秋田自動車道を経て紆余曲折片道7時間の旅。Googlemapでその時間を見るたびにそれだけで心が折れてしまって、その都度断念していました。FLATの遥か先ですやん。沖縄の時のように移動手段がころころ変わって9時間とかなら多少気がまぎれるので何とかなるのですが、1つの移動手段に長いこと拘束されるのは流石にきついのです涙 今回は大阪に行く前に東北の気になるジムをまとめて巡ろうということで、相当に気合を入れて車で行って来ました。まぁ新幹線とか使えば多少時間は短縮できたのでしょうが、ジム巡りをするには車の方が何かと都合いいですからね。駅近とかアクセスがいいジムばかりでは無いですから。
さて序盤だというのに早速脱線しましたが、今回も張り切って紹介していきましょう。
店舗の大きさ
店舗は大きな倉庫を使っており、そのスペースのほとんどをクライミングエリアに使っているので、結構大きめです。入口を抜けると少し風変わりな除風室があって、そこから店内に入ります。店内に入ると広々としたクライミングエリアが広がり、SNSなど画面越しに眺めていた壁が目の前に広がっているのですから、それだけでワクワクが止まりません。新しく行くジムというのは、何件行ったとしても高揚感を覚えてしまうものです。1階の奥には更衣室があり、その上に隠れ家のような雰囲気のレストスペースがあります。何より気楽だったのが、荷物などはクライミングエリアの適当なところに置いておけるのです(流石に端っこの方に置いておきましたけどね)。更衣室に一々戻るのも面倒なので、こういったスタイルは非常に楽チンで助かります。
壁について
壁は緩傾斜側と強傾斜側に2分され、その時々のヨレや気分に合わせて気ままにのびのびと登ることができます。傾斜の種類も豊富で、スラブに始まり多面壁、薄いマントル壁、垂壁、110度、132度、148度となっております。壁高も4.2mと一般的な高さで、緩傾斜ではほどほどの高さでありながら、傾斜壁では十分な登攀距離が出るので、登りごたえ十分。多面壁と垂壁以外は各面広々と作られているのが、また良いのです。緩傾斜側では薄いマントル壁が実にいい味を出していまして、ヨレて緩傾斜に逃げた時はこの壁ばっかり触っていました。薄いと言うのも、マントル壁ではあるのですが通常のマントル壁に比べて厚みが少ないので、とりあえず『薄い』と表現しておこうと思います。下部は少し傾斜があって、上部はあまり寝ていないスラブ状になっており、その抜け口が垂壁ともスラブとも薄かぶりとも言えないような緊張感があって、上部に抜けるのも少しばかり勇気が必要な、そんな壁になっております。左右からこの壁に入るような課題では多面壁様の動きになり、これがまた面白い。ヨレた際にはこの壁に逃げましょう。実は全然逃げにならないのですけどね笑
一番奥の強傾斜は見たときに随分と被っているなとは思っていたのですが、148度と聞いたときには驚きが隠せませんでした。だって148度なんて、ほとんどルーフに近い角度じゃないですか。通りで疲れるわけですよ。でもなんだかんだこの壁と132度が楽しくて結構な時間をこの2つの壁の前で過ごしていました。しかもこの148度の横には薄かぶりと小ぶりな垂壁がありまして、強傾斜と緩傾斜を一度に楽しむことができるのです。とりわけ奥の緩傾斜と垂壁の間のコーナーは待機スペースから見えない位置にあるのですが、いざこのコーナーに入ってみると、なんか落ち着くんですよね。ちょっと薄暗くて狭くて音が聞こえにくい壁なので、妙に落ち着くんです。きっと狭いところが好きな人はこのコーナーを良いと思ってくれると思います。ま、そんな個人的な嗜好は置いといて。実際ジムで1番の強傾斜とコーナーのある緩傾斜が並んでいるので、初心者から上級者まで、様々なグレードの人がこの壁の前に集まっていて楽しくセッションや声援を交わしていましたので、すごく良い壁でした。ジムというのがあくまで商業施設であるからして、登られない壁なんてありませんし、人が集まればそれなりにコミュニケーションが生まれるものかとは思いますが、無意識的にグレード差が大きい人とは話しにくいと感じてしまうと思うのです。アドバイスしてみても煙たがられても嫌だし、かといって強い人に登っている課題の話を振れるわけでも無いし、グレードが開くと話のきっかけが掴みにくいじゃないですか。でもこの奥壁ならそんなグレードの無意識的な垣根はほとんどなくて、ガンバを言っているうちに自然と会話が生まれるのです。そのまま地元のからオススメのお店を聞けば美味しいお酒とご飯にありつけるという寸法ですね(多分違うけど。ちなみに秋田のご飯と日本酒はとっても美味しかった)。遠征の楽しみの1つは現地の美味しいご飯などでありますから、こういう風にコミュニケーションが取りやすいジムだと、現地の美味しいお店を聞きやすいのでとても助かります。
課題数
課題数は普通くらいで、全面ラインセットになっております。グレード感は辛めなので、課題数が普通くらいと言っても、中々のボリュームを感じる課題のパッケージになっていました。極力全ての課題を触れようとはしましたが、それでもいくつかの課題は触り損ねてしまったので、休日のガッツリと登る遠征には十分過ぎるくらいです。余談ですが、あまりにも楽しくてついつい予定よりも長く登りすぎてしまって、翌日のジムに着く頃にはズタボロでした。
課題の傾向
課題の傾向は結構特徴的で、『ホールド感は良いけどムーブやホールドの向きが悪い』という感じです。強傾斜にもなると随分ホールド感は良さそうに見えるのでこれはイケるでしょとタカをくくっていくと、予想以上に悪くて敢え無く落とされます。まぁ正直なところ、そういうことを何度も何度もやりました。ホールド感が良い中に急に悪めのものが混じっていたり、ホールドとホールドの位置のバランスが悪かったり、動きが悪かったり、全くもって一筋縄では行きません。
またホールド感が良いので動きが大きく、パワフルな課題が多かった印象です。ギリギリまで足残して気合の足上げとか、クロスで足が切れたり、しっかり抱えたり、たまにはランジしたり。そんなフィジーでパワフルな感じですがヒールもトゥでの挟み込みなど足技も豊富。もうすっごくボディに来ます。足技を使うにもしっかりとした体幹を要求されるので、これまた辛くて面白い。全面ラインもしくはカラーセットになっていますが、スポーツクライミング的なコーディネーション系は少なく、しっかり持って動いていくので、ちゃんとクライミングしてる感があって体に来る負荷が心地良いものとても良かった。コーディネーションが楽しいのは分かりますが、やはり登る充実感を感じる課題の方が私は好きですね。ちゃんとクライミングしてるって。その為か翌日の肩と体幹まわりの筋肉痛は普段以上のものでした。目が覚めて「あれ、今日これ登れないんじゃないかな」と心の底から思いましたよ。そこは気合で押し通しましたけどね。
グレード感
グレード感は辛めかと思います。3級までは比較的ノーマルな感じですが、2級以降は結構絞られている印象です。ホールド感が良いから行けそうな気もするんですが、そんな事ないんですよね。2級以降はほとんど完登出来ませんでした。ホールド感が良い分、もしかしたら保持感が強い人なら登りやすいと感じてしまうかもしれませんが。
1つ不確定要素としてあるのが、今回の往訪はホールド替えの直後でホールドにほとんどチョークが乗っていなかったので、滑り手の私には辛いと感じたのかもしれないという事です。まぁ、言い訳ですけどね。冗談抜きに新品かと思うくらいどのホールドも綺麗に洗われていますので、滑り手の人はチョークが乗ってきた頃合いで行くといいでしょう。チョークが乗っていない状態では中盤に行く頃にはすでにチョークは跡形もなく、なんだったら洗いたてですかみたいな滑り具合だったので、上部でダイナミックな動きをする課題は事故臭プンプンでした。本当に乾き手になりたい。
雑記
さて、とりあえずガーッと書いてきましたが、まだまだ続きますよ。
私が初めてこのジムを知ったのは、いつぞやのクニクニさんの帰郷したときの投稿。すごく楽しそうな壁だなと思い、それからずーっと登りに行きたいと思い焦がれたジムでした。私がこのジムの何に惹かれたかって、そりゃもちろん強傾斜をラインセットで大きなホールドを多用していたからに他なりません。しかもそのホールドの数々がまた魅力的で、Flatやe-gripはもちろん、スクアドラや愛するKilterまであるじゃないですか。写真でオブザベしても少し曖昧な部分が残るような見た目だし、間違いなく面白いジムだろうとずっとソムリエのチェックリストの中にありました。そして実際に訪れて登ってみると、予想をはるかに超えて面白いし、翌日のクライミングのことなどすっかり忘れて登り込んでしまいました。やっぱり、大きいホールドは正義ですよね。
店舗はクライミングジムとして十分に大きい方なのですが、隅々まで掃除が行き届いておりまして、とても綺麗な快適空間に仕上がっております。私自身はクライミングジムは汚れるところだと思っているので、綺麗かどうかは普段はそこまで意識することはないのですが、どうしても空間の隅やマットと壁の間の空間とか、棚の上のチョークや埃と言うものは目に入ってきてしまうじゃないですか。でもガラパカでは不思議なほどにそういったものがなくて、掃除が行き届いているなと思わず感心してしまいました。これなら子供を連れてきても空気的に安心だし、新規さんを連れてきやすい空間になっております。私も喘息持ちなので、あんまりにもチョークが舞っているようなジムだと発作が少し出てしまうことがありますが、ガラパカではそういった意味でも快適空間でした。
また、秋田杉や流木(だと思う)を用いた内装が絶妙なアクセントで、慎ましい主張ながらもお洒落な空間に仕上がっていました。なんと言いますか、木の温もりがあるんですよね。クライミングに直接関係するわけでは無いですが、細部までこだわりを持って作られたジムなのだなと感じました。
クラムボンとコラボしたイベントなども開催しており、ホールド替えの頻度も高め。近隣にあったら間違いなくホールド替えの度に通いますね。普段のセットは店長のガラさんこと五十嵐さんが1人で行うことが多いそうですが、今回の往訪の際にはGW仕様で大西さんなどのゲストセッターが入っておりました。なんだか珍しいタイミングに来てしまったようですね。とっても楽しませてもらいました。
あとジムすぐ裏にコンビニがありますので、補給の心配はありませんのでジムに直行しても大丈夫。遠征に行く際の近くのコンビニ事情は結構重要ですからね。
この他にもスタッフの方の手作りチョークバックがあったり(これがまた良い感じで、思わず買いそうになってしまった)、スタッフの方々の人柄がすごく良かったりと魅力溢れるジムですので、遠方の方でも是非一度は足を運んでみてもらいたい、そんなジムでした。東北にお住いの方でもまだいったことがないという方は、間違いなくハイテンションで一日中登り明かせますので、是非足を運んでみてください。遠征向きで打ち込み甲斐があってフィジーでトレーニーなイカした課題達が、皆さんの往訪を待っていますよ。
それでは皆さん、またお会いしましょう。