皆さんこんばんは、ソムリエです。
第60回は福島県郡山市にある『TRAIL ROCK』を紹介します。
いつぞやの東北ツアーでジムのショップの話になった時、東北のジムのショップについてトレイルロックを差し置いて話をすることは出来ないなと思い、それじゃあ記事にしなければと早速お邪魔してきました。トレイルロックは福島や東北の中でも歴のある老舗であり(今年で12年!)、今の東北のクライミング事情における、中心核の1つとも言えるジム。東北のジムを巡ってみて、トレイルロック、しいてはとみじゅさんの作るクライミングは、多かれ少なかれ東北のクライミングに影響を与えているのだなと、身を以て感じました。ここに来れば私が再三言っている『東北スタイル』のクライミングを全身で感じることができると思います。そして何より課題の面白さ。一癖も二癖もありながら、フィジカルに訴えてくる課題はどれも登り甲斐があって、最高でした。
クライミングジムトレイルロック
ということで今回も早速、紹介に入っていきましょう。
店舗の大きさ
店舗は結構な大きさで、そのほとんどの部分をクライミングエリアが占めています。というか、結構な大きさの箱だと思うのですが、壁が盛り沢山すぎてちょっと詰まっているようにさえ感じてしまいます。傾斜の変化が富んだボルダー壁の他に、キッズが楽しめるマントル壁、奥には傾斜が厳ついリード壁まであります。奥のリード壁と強傾斜の間には大きなレストスペースがあって、そこには大きなテーブルがあります。そこが一番ルーフや強傾斜へのアクセスが良いので、その周辺に居座ることは間違いでしょう。
2階には大きなショップがあり、後述しますがこれはトレイルロックに来た際のお楽しみポイント。トレイルロックに行く時のモチベーションの3分の1はこのショプを楽しみにしているといっても過言ではありません。
また、トイレ付近にシャワールームもあり、会員ならなんと無料で利用可能です。超お得。全力で登って汗やチョークで汚れたとしても、こちらでさっと流せます。ツアーで来た人の利用が多いそうで、聞いた時には「なるほど、そんな使い方もあったのか」と気付かされました。今まで結構シャワーがあるジムではシャワーについて紹介していると思うのですが、実際一回も使ったことないんですよね。ぶっちゃけ言いますと。クライミング終わったら温泉直行サウナ水風呂派なので、クライミング後に女の子とデートなんてそんなリア充的な一面はソムリエさんにはないんですよ。ホント、悲しいことにね。とりあえずタオル等はジムにはないので、その辺は各自用意して利用しましょう。
壁について
壁は緩傾斜から強傾斜まで豊富にあり、ざっくり分けると、90°・ 100° ・ 多面体マントル(最大120°) ・120° ・115°・ 120°・ ルーフ ・スラブ85°・ミニマントル(最大115°) となっているそうです。90°〜ルーフにかけては一繋がりの壁になっていますが、スラブは奥のリード壁の一角で、ミニマントルは完全に独立したキッズウォール的な感じになっています。また奥には上部のルーフがえげつないリード壁があり、色んなクライミングが詰め込まれた濃厚な空間になっております。とりあえずソムリエさんはリードはほとんどやらないので、今回はボルダー壁を中心に話を進めていきましょう。
角度のバリエーションに富んだトレイルロックのボルダー壁は前述したように一繋がりの構成になっており、面一の部分もありますが全体的に多面壁様の壁になっていて、複雑に切り替わる角度にバランスを乱される癖のある壁になっています。持つ分には問題なかったホールドも、いざ踏もうとするとアングルが絶妙に悪かったり、使えないところにあったり、その逆もまた然りと変化が多様で面白い。また形状を生かしたダイナミックな課題やガシガシ登れるパワフルな課題なども豊富にあるので、課題のバリエーションが本当に豊富な良い壁でした。やはり傾斜のついた多面壁は最高に面白いですね。
個人的にお気に入りなのは奥の120°〜ルーフにかけての傾斜エリア。ルーフは2種類あり、奥行きがある深いルーフとルーフが高い部分にあるハイルーフという構成。足切れ前提のダイナミック系もあり、それに至るまで粘り強く足を残していかねばならない課題もあったりと、腰と体幹にガツンとくる壁で、大半の時間をこの辺で過ごしてしまいました。
またスラブも小ぶりながら濃ゆい課題が揃っていまして、最近スラブに苦手意識が芽生えてしまったソムリエさんも、この壁は嬉々として取り組んでしまいました。全体的にいやらしいスタンスでポジション取りや動きが悪いといったテイストの課題が中心で、ホールド感も人気のホールドを多用して、これぞジムスラブって感じ。ちょうどルーフなど強傾斜の近くにありますので、傾斜でヨレたらスラブで回復を図って、再び強傾斜に戻るという無限ループも容易。もう、本当奥のエリアに居座ってました笑
ルーフの更に奥の方にはトレーニングボードもあるので、締めのトレーニングも追い込みも完璧。でも実際ここに来たら、動けなくなるまで思いっきり登り込んだ方がよっぽどトレーニングになるかとは思いますけどね。
課題数
課題はそのほとんどがカラーセットで構成されていますが、各グレードかなりの本数があり、130本とかなり多め。課題の強度も癖も強めなので、1日の遠征では触り切るのは中々骨が折れることでしょう。1〜3級あたりを中心に触り尽くしてきましたが、時間もそうですが何より体力が先に足りなくなってしまいました。これいじょうは動けないと断言出来る程にヨレ果てられました。
最近遠征での登り方を少し変えまして、今まではアップがてら下のグレードから全て触るように登っていたのですが、それだと後半高グレードを触る頃には体力が残っていないので、アップが終わり次第高グレードから登り始めて、本格的にヨレが隠せなくなってきたら下のグレードに移行するようにしています。そのほうがより多くの高グレード課題を楽しめるじゃないですか。最後の一手が出ないとか、フレッシュだったら行けたとか、悔しいし何より言い訳みたいで嫌なんですよね。フレッシュなら登れるものは登れるし、登れないものは自分が未熟なだけであって、言い訳の余地もなく登れない理由がはっきりするので、自分にとっての課題が見つけやすいのでオススメです。まぁ、ちゃんとアップしないと怪我をしかねないので、その辺は自分でうまい具合に調整して試行錯誤しながら加減を掴んでいただければと思います。とりあえず私は、まず簡単な課題を何本か登りながら大きな筋肉を動かして、体が温まったところで一度静的ストレッチになりすぎない、ほぐす程度に軽くストレッチをして、そこから前腕や指にかけて刺激を入れて小さい筋肉や関節を馴染ませるという流れでやっています。課題数とか全然関係ない話でしたね。
課題の傾向
半年に一回、ゲストを招いて大規模なホールド替えがあり、その度にいろんな人がセットに入るので、セッターごとの多種多様な特色を感じることができます。課題のスタートのところにはセッター名が記入されており、それを目印にセッターのテイストを味わい尽くすのも、セッターごとのテイストの違いに舌鼓を打つのもまた良いでしょう。というか、それがすごく楽しかった。強さ溢れる東北スタイルはもちろんのこと、ダイナミック・パワフル・激保持・コーディネーション・テクニカルと本当にバリエーション豊富。しかもそのどれもがクオリティも高く癖もあるときたものですから、楽しくて楽しくて仕方ないのです。
バリエーションが豊富な中でも、指先で持ってそこを軸に肩や背中で耐える東北スタイルはやはり色濃くて、この辛さが堪らなく良い。またその軸が微妙にズラしてあるようなポジションも気持ち悪くて、つい夢中で登り込んでしまうこと間違いなし。もう最高にトレーニー。フィジカル弱めな私としては、登るだけでトレーニングになり得るその強度に、ついついトレーニング熱に火がついて、ヨレてろくに体が動かないとは自覚していながらも、それらを無視して登り込んでしまいました。
あと、大きいホールドは無条件で愛していますが、大きいホールドでのクライミングって、クライミングっていうよりスポーツ感の方が強くなりがちじゃないですか。運動神経問われるような感じとかね。楽しいんだけど、やりすぎるとその内しっかり持って動く『クライミング』がしたくなってくるのです。かといって小さいカチとかはそんなに好きじゃないんですけど。そういった意味でトレイルロックのホールド感は全体的に本当にちょうど良くて、大小様々なホールドが取り揃えられていて、とりわけ大き過ぎず小さ過ぎないミドルサイズのホールドがふんだんに使われています。新しいホールドはもちろん、定番の人気ホールドも、最近は見かけなくなったけど好きな人には分かってもらえる昔のホールドなど、思わず触ってみたくなってしまうそのホールド感に、モチベーションを刺激されっぱなしでした。グレードも忘れて惹かれるラインを惹かれるがままに登り、しかもそんな課題が山盛りあるわけですから、遠征に来て課題が足りない、登りたい課題がないなんてことには間違いなくなりません。
グレード感
グレード感は、だいたい普通くらい。要所要所の振れ幅がありちょっと悩みましたが、締まるところはしっかりしまっているので、そのくらいかなと思います。でも低グレードの課題で妙に悪いものがあったりして、アップの際にはこの先のグレードはどうなっているのだと危機感をうっすら覚えます笑 安心してください。4級以降は比較的真っ当なグレード感でまとまっているので。
雑記
冒頭でも少し触れました2階のショップについて簡単にお話ししておきましょう。トレイルロックのショップエリアは東北のジムの中では1,2を争う大きさで、、古今東西様々なグッズが置かれています。シューズやチョークに始まり、ブラシやマニアックなウェア関係まで本当にいろんな種類のものが取り揃えられています。でも実際、そういうショップというのは遠征している身からするとそんなに物珍しいものでもなくなってしまうのですが、ここのショップは分かる人には分かってもらえる、思わぬ掘り出し物があるのです。ホールドメーカー『CORE』のTシャツやパンツ、激レアDVD、もう作られていないクライミングパンツなどなど。訪れた際ににそれらがある保証はありませんが、探していたけど、もうどこに行っても見つからないというものが案外このショップに眠っているかもやしれません。今まで見てきた感じ、メンズの掘り出し物は無くなるの早め、レディースの物は割とあったりするので、女性クライマーには特にオススメ。是非訪れた際にはじっくりショップ内を見てもらえればと思います。私もここに来たら、大レストの時に必ず一通りチェックしてしまいます。とりあえず、お財布には多めに仕込んでおきましょう。
あと、これは私一個人が感じていることなのですが、最近は遠征に行きたいと思うジムが随分減ったように感じます。どこかで触ったような課題、どこかで触ったホールド、どこかで触ったセッターの課題。ホールドが変わっても、いまいち気を引かれないということが以前よりも多くなりました。なんとなく、そう感じている人も少しづつ増えてきているのかなと思います。そういった画一化とも言えることが進むジムの中で、ブレない自分のテイストを持っているジムというものは、強く惹かれる魅力を感じるのです。そういった意味でもトレイルロックには強い魅力があって、特徴的な壁に歴が長いジムだからこそ出来る新旧様々なホールド感。そしてそれらの環境の中でとみじゅさんやmovementの國分さん(大概いつもセットに入ってる)の課題は、ここでしか味わえないもので、だからこそ足を運ぶ価値があると思えるのです。普段とは違う刺激や遠征先を求めている人には、特にオススメ。
最後に、大きいはずの箱が狭く感じられてしまうほど沢山のクライミングが詰め込まれた濃密なジムで、兎にも角にもモチベーションを刺激されまくる課題の数々が最高でした。遠征にも良し、トレーニングにも良し、セッターごとのテイストの違いを堪能しに行くも良し。掘り出し物を求めに行くのも良し。是非一度、足を運んでみてください。クライマーなら堪らないと思う課題の数々や色んなものが、皆さんのことを待っていますよ。
それでは皆さん、またお会いしましょう。