皆さんこんばんは、ソムリエです。
第54回は神奈川県横浜市にある『クライミングジム プロジェクト』を紹介します。
クライミングジムプロジェクト
ついに、ついにプロジェクトについて書く日がやってきました。いつぞや『暮らし~の』様で書かせていただいた、「関東の中上級者向けオススメジム8選」という記事の中でも少し触れましたが、これだけ色々出歩いていながらプロジェクトには訪れたことが無かったのです。人伝てに聞く話では猛者ばかりのジムで、誰も喋らずスマホも弄らず、ただ黙々と登りこむ硬派なジムと聞き及んでおり、もっと言うなら高級料亭のような格式の高いジムだと勝手に思っていました。ちゃらんぽらんな気持ちでは決して足を運んではならず、コンディションをバッチリ整えてから行くべきジムだと本気で思っていましたよ。SNSでもあまりプロジェクトでの動画を見かけることが無かったので、実際どんなジムなんだろうと想像は膨らむばかりでした。ささやかな不安と高揚感を抱きながらいざ行ってみると、そんなに怖いジムじゃないですか。課題は面白いし、猫は可愛いし、コーヒーやサンドイッチが美味しい。めっちゃ素敵なジムですやん。
という訳で、いろんな先入観を持った私が実際に訪れてみた感想を踏まえながら、紹介していこうと思います。
それでは早速始めていきましょう。
クライミングジムプロジェクト
- 店舗の大きさ:大きい
- 壁高(壁について):普通よか高い
- 課題数:膨大
- 課題の傾向:フィジーで岩っぽい
- グレード感:多分辛い
店舗の大きさ
店舗はかなり大きめ。受付や物販があるところは広々としていて、ここでゆっくり美味しい珈琲を頂いたり、サンドイッチを食べたり、談笑に吹けることもできます。ここには1つ大きなテーブルがあり、時折それを囲みながら談笑している人達の姿があって、自然体でくつろげるリビングのような空間でした。受付エリアの先には更衣室があり、足洗い場とシャワーまである充実っぷり。タオルレンタルもしているそうで、突発的にシャワーを浴びたくなっても安心。2階には荷物置き場と広々としたトレーニング・ストレッチエリア、親子で楽しめるキッズウォールがあります。小山田大さんや野村真一郎君のトレーニング動画などをみて、見たことがあると言う方は結構多いんじゃないでしょうか。トレーニングエリアにはフィンガーボード系の他にもう1つ、キャンパボードがあります。この傾斜でのスローピーなキャンパは肩や背中にガツンとくるので、とても楽しい。つい登る前に遊んでしまいました。もちろん締めのトレーニングにも最適。トレーニング後は空いたスペースでのんびりストレッチで完璧です。しっかりストレッチをしようと思った時実際そこそこスペースが必要で、ジムでやろうとすると邪魔にならないかなと少し気が引けてしまいますが、ここはクライミングエリア外にあって広々としているので気兼ねなくできると言うものです。吊り輪等の器具があるのも、ストレッチ的には嬉しいポイント。こう言う器具を使った方が様々な角度に調整できますからね。
そして肝心のクライミングエリアはこれまた広いのです。ビギナーウォールからレギュラーウォールのどれもが1つ1つ大きい。まぁ壁の規模の割にレストスペースがやや小さめな気もしましたが、それだけ壁に重きを置いた構成ということでしょう。とりあえず壁全般については次の項目でより詳しく触れますので、ここではこの程度にしておきます。
壁について
さて、壁について詳しく語ってきましょう。壁の構成は、ビギナーウォール・95度・スラブ・110度・125度・ルーフ・130度・140度・ヘサキ(船首)・バルジと種類豊富。そして言うまでもなく圧倒的な強傾斜の多さ。最高です。写真で見ると面一の壁が多そうに見えるかもしれませんが、壁の種類が豊富なので壁の変わり目が多面壁的な様相を呈しており、思いの外立体的な壁だなという印象が強いです。面一の面がすごく大きいので、実際面一の方が多いんでしょうけどね。見た目の割には多面壁の要素も多いんだなと。とりわけバルジは巨大な上に傾斜の変化が激しい多面壁ですので、一筋縄では行きません。また壁の1つ1つがかなり幅広で大きく、結構大きめのボリュームが豊富についているのですが、それほど大きく見えないのがすごいところ。こんなに盛り盛りなまぶし壁というもの珍しいですし、ボリューム好きとしては自然と惹かれてしまいました。あのホールド良いじゃんと思ってテープを辿り、そのホールド触りたさに頑張る。モチベーションの絶えないすごく良い壁。
ルーフ・130度・140度はかなりの大きさで、どの壁も1つだけで他のジムのメインウォールとなり得る規模と内容。まぶしの構成もボリュームがキーホールドとして散りばめられ、ホールドとホールドの繋がりがしっかりあって、無限に遊べそうなまぶし壁でした。フットホールドも多彩で、これほど丹念に作り込まれたまぶし壁もそう無いものでしょう。そして強傾斜が多いので、どの壁で登ろうにもこの上なく良いトレーニングになります。ここで登っていたら、強靭な体幹が手に入りそうです。
壁高は正確な数値が分からなかったのですが、目測マット高で4.3mくらいはありそう。降りて来た感じ的にも、そのぐらいかと思われます。しかし強傾斜が多い為か、実際それ以上高さがあるようにも感じました。
マットは緑の部分が一般的な柔らかさのマットで、白い部分が結構硬めのマットになっています。アップ際に油断して降りると割と衝撃が強いので、膝と腰にきます。しっかりクライムダウンするか、しっかりと硬さを認識して降りるようにしましょう。
バルジの両サイドとヘキサの3面はラインセットになっており、そのほかの壁は全面まぶしになっております。遠征組としてはラインセットがあるのは取っつきやすいので素直に嬉しいですし、何より一本一本が濃い。ジムの中でも多面要素が強い部分の壁をふんだんに使ったラインセットなので、動きがテクニカルかつ立体的で面白い。岩っぽいバランス感でありながら、ジムらしい大胆さがある課題が豊富な印象。とりあえずラインセットの方でテンションを上げてから、まぶし壁という流れが個人的にはオススメです。
課題数
課題数は膨大の一言に尽きます。テープ課題だけでも一日かかっても登りきれる量と質ではありませんし、それに加えてイベントのファイル課題・通常のファイル課題があるものですから、触り尽くそうと思ったら本格的に移住を考えなければなりません。多分今まで訪れたジムの中でもぶっちぎっりの課題量。ちなみにテープ課題はグレード表上緑までありますが、来訪時には赤までしか見当たりませんでした。といっても緑は4段以上なので、テープ化するよりファイル課題にしてまとめておいた方が合理的なのでしょう。ファイル課題を無作為にチョイスしていくつか登ってみましたが、どれも質が高いし一筋縄ではいかない課題ばかり。素直にここの近くに住みたいと思ってしまいました。これだけ課題に溢れていれば、やることに困らないし、モチベーションの維持も容易でしょうし、何より間違いなく強くなれる。
課題の傾向
課題の傾向は全体的に岩テイストな感じ。課題の中でのバランス感や、全体的に足を切ってはいけない構成が、岩っぽい。強傾斜が多いのでホールド感自体は良いのですが、保持感は強め。その上で足が切れるとどうしようもなくなるので、しっかりと踏んで一歩一歩足を決めながらジワジワというか確実に手を進めていかねばなりません。そんな指先から足先に至るまでフルに使う課題が豊富でした。帰る頃にはズタボロでしたが、全身余すことなく疲れ切れたので、非常に満足感のある疲労でした。帰りの電車はかなりしんどかったけど笑 ただいろんな課題を登るだけでも一本一本の密度が濃く、様々な要素を内包しているので、最高にトレーニー。ラインセットの方にはダイナミック系の課題がいくつかあったりしますが、それほど本数は多くありません。まぁそういうジムっぽい課題は他所でやれば良いだけのことです。ここに来たからにはひたすらに『クライミング』に興じましょう。
また最も大きな特徴として、トゥフックが頻出します。テープやラインセットに限れば、体感ではヒールよりもトゥフックの方が多かった。個人的にはトゥフック大好きなので、ここはトゥフック天国かとこの上なく楽しんでしまいましたが、足の親指と体幹周りがボロボロになりました。でもこれでもかとトゥフックが出来たので、大満足です。多分一回の遠征でこれほどトゥフックをしたのも、トゥフックが必要な課題の数も、過去最高だと思います。
フットホールドは踏みやすいガバガバなものではなく、比較的ポジティブなカチだったり、ボリュームはあるけど踏み続けられたであろう真っ黒で年季の入ったすっごく踏みにくいホールドだったりとフット1つとっても秀逸。足が切れちゃいけないんだけど、踏みにくいから必死の体幹で足を残すのが辛くて良い。不思議だったのが、踏み続けられたであろうソールで真っ黒なホールドの踏み心地が明らかに他のジムとは大きく異なっていたこと。ソールが詰まりに詰まって滑るという感じはそんなになく、見た目はそれだけどもう少しフリクションがあるんです。思うにすごく丁寧にホールドを洗い使い続けてきたからこその踏み心地なのでしょう。
その他にも、『スタートホールドの下にテープがない場合、足自由』という独自ルールがあり、時折悪目の足自由課題があったりします。昔々、プロジェクトは『初段以上足自由らしい』という噂を聞いたことがあったのですが、そんな大規模な括りではありませんでした。今やその噂の出所も思い出せないんですけどね。もしまだその噂が頭に残っている人がいれば、そんなことないよってことで。
まぶし壁には最近ではほとんど見かけないような、それでいて質の高いホールドが数多く付いていて、まぶし壁としての完成度が非常に高いものでした。古いCOREとか、すごく久しぶりに見たような気がします。CORE良いですよね。厚みがあって。その上で色々と面白い表情が観れるので大好きです。そんな感じに、このホールド懐かしいわーとか思いながら、それらのホールドからジムの歴史の深さを感じてしまいます。
グレード感
とりあえずテープ課題の方から振り返ってみようと思います。テープ課題は6段階に分かれており、ふわっとしたグレード表記になっています。アップもほどほどに5~3級の黄色テープを触っていると、たまに本気トライで、割と落とされます。黄色テープの課題をほどほどに楽しんで、体が十分に温まって体力も残っているうちに2級~初段+のオレンジテープを触れば、本当にギリギリ1・2本できたくらいで、大半の課題ではどう頑張ってもこなせないパートがありました。まぁそりゃそうです。『本物』の保持感や強度を持った1級や初段なんて、そうそう落とせた試しないです。記事の為に赤テープを何本がお触りしましたが、チョークをただ付けただけでしたね。グレード表記が随分ふわっとしているので単純な評価はできませんが、グレード表記の上で見ても辛めではあるのかなと思います。ファイル課題の方も同様のテープの色でのグレード表記で、ふわっとした感じ。テープ課題よりファイル課題の方が全体的に辛めな感じかなという印象でした。小山田大さんの赤グレードのファイル課題があったので試しに触ってみたのですが、久しく感じなかった絶望感を感じられるものでした。クライミングを始めて間もない頃に触った1級で感じた絶望感。どうやって持ってどう動くのだとさっぱりイメージが湧かない。ギリギリ2手は進んだけれども、体はピンピンに張っていて保持感も相当ギリギリでその場にとどまっているのが精一杯。それなのにこの次の一手はダイナミックに動くという課題で、これがトップクライマーの世界なのだなと染み染みと感じました。しかし絶望感と同時に、まだまだ知らないクライミングの世界があるのだなワクワクしてしまいました。こんな私は変態でしょうか。
ここからは好みの問題ですが、最近はこういう風にふわっとしたグレード表記がお気に入りです。グレードが分かっている状態だと効率よくいろんな課題を触る為に「あぁこれは無理だからやめよう」とか、「これは簡単だろうから後でいいや」と判断してしまうのですが、このように幅が広めにあったり、グレード目隠しのような表記ではオブザベして強度の程度を推し量りつつ、実際に課題を登って確かめるじゃないですか。結果としてその方が純粋に課題を楽しめると思うのです。
雑記
兎にも角にも、この圧倒的な強傾斜が最高でした。強傾斜好きなら壁のルックスだけでテンション上がってしまいますでしょうし、まぶし好きならもう発狂レベルで楽しめてしまうと思います。実際遠征で登ってみて、ラインセットもまぶし課題もそれらの違いを気にすることなく登れました。概ねラインセットとまぶし壁のテープ課題の差異などホールドの大きさとオブザベのしやすさくらいなものですが、一度登りだしてしまえばほとんど差異はないと言っても良いでしょう。ボリュームいっぱい付いてるし。まぶし壁に苦手意識を抱いている人こそ、この壁を体験してもらいたい。こんなに楽しいまぶし壁があるものかと思うはずです。
流石に小山田大さんのジムなだけあって、物販のイボルブの充実っぷりが素敵。イボルブ好きなんですよ。素直にカッコいいじゃないですか。シューズなどもシャーマンに始まりアグロ、X1とお世話になっていますし、クルーザーも愛用中。個人的にかなり熱かったのは、イボルブから出ている『マジックテープ』という非粘着性のテーピングと『Dry Pointe』が売っていること。ドライポイントはいつぞや書いたシューズの消臭についての記事の中でも触れましたが、すごく便利なアイテム。シューズに入れるだけ。たったそれだけで臭いの程度と発生を随分抑えてくれます。新しいシューズを買うときは必ずセットで買います。でもSサイズはすぐ売り切れるし、結構欲しいタイミングで買えないこともしばしばあるので、買い貯めしてしまおうか本気で悩んでいました。もう1つのマジックテープは滑り手にオススメの課金アイテム。どうしても登りたいけど指皮なさすぎてテーピングをする際、滑り手の場合普通のテーピングだとポンポン抜けていきますが、これはそう言った手汗で抜けるということが非常に少ないのです。うまく巻ければ1日持ちます。泊りがけの遠征や、課題数が明らかに多いジムに行くときは必ず持っていき、指皮の消耗を抑えたり、指皮が死んだとき用の課金アイテムとして運用しています。1つ注意点として、使い終わった際に端を折って目印を作るのを忘れてはなりません。忘れると高確率で切れ目を見失って、パン切りナイフで切る羽目になるので。その他ダイホールドのトポやチョークを始めとした各種魅力的な商品が売っているので、物欲をすごく刺激されます。
また受付横にある『hajime kitchen』では、美味しい珈琲とサンドイッチをいただくことができます。しかもどちらも結構リーズナブルなお値段(正確な値段忘れた)。休憩がてら受付側に行こうものなら、サンドイッチのいい匂いがして迷わず頼んでしまいます。めちゃうま。訪れた日にキッチンがやっていたら、ぜひ頼んでみてください。
さて、いかがでしたでしょうか。
プロジェクトはいつかは行ってみたい、ジムソムリエとして必ず行かなければならないジムの1つだと思い、訪れられるタイミングをずーっと探っていました。そしたらやっと見つけたタイミングが沖縄旅行の翌週で、ソムリエさん自分の首を自分で増し締めしていました笑 3つも紹介記事を溜め込んでヤバイと言っていたのに、実は一時期4つも溜め込んでいたんです。マジで書き終わらないんじゃないかと思った。まぁ極力仕事を増やさないようにして、なんとか書き終えることができました。そしてやっと訪れられたプロジェクトは最高でした。課題の質も雰囲気もすごく良くて、ひたすらに登って登って登り倒すことができました。またそう遅くならないうちに、今度はしっかり宿をとって時間を気にせずじっくり登れるようにしていこうと思います。
とりあえず最後にまとめますと、最高にトレーニーで課題の質でテンションを上げられっぱなしの素敵なジムでした。全力で楽しむためには、事前にしっかりコンディションを整えておくことをお勧めします。普段の遠征はラインセットばかりという方も、是非足を運んでみて下さい。
それでは皆さん、またお会いしましょう。